2009年、私は南米のボリビア共和国で10ヶ月間のボランティアに参加しました。
NGO DIFAR(ディファル)が現地で野菜作りと堆肥づくりの指導をする人材を探していると友人から聞き、これまでの仕事で培ってきたものを途上国で活かしたいと思い応募しました。
現地へ派遣される前に研修があり、そこでの出会いが有機農業を始めるきっかけとなりました。
研修先は三重県津市の有機農業家 橋本力男氏の農場で主に堆肥づくりの講義と実習の講座を受けました。
私は実際に有機農業をされている方に会うのも、農場を見るのも初めてで驚くことが多かったのですが、中でも衝撃的だったのが堆肥場でした。
堆肥といえば、家畜糞などが原料でいやな臭いを想定していたのですが、そのような臭いはまったくなく、排水口の泥をすくってみても悪臭はありませんでした。
私が現地で指導する予定の生ごみ堆肥にしても同様で、発酵中の堆肥からは驚くほどよい匂いがしました。
それらの原因は全て良質で多種多様な微生物の働きによるもので、それらの働く高品質の堆肥を施すことで、「生きた土」となり、そこから育った「健康な野菜」は病虫害に強く、きれいでおいしいものが採れる。
悪臭のする堆肥は、家畜糞などを腐らせてしまい、腐敗菌などの多い危険なもので、それを施してしまえば当然、土は腐ってしまう。その土からできた野菜は不健康で、病虫害にも弱く農薬に頼らざるをえないということでした。
土の重要性を認識し始めていた私にとっては、おおいに説得力のあるものでしたし、腐った土からは丈夫で健康なものは育たないというのは現場を見てきた私にとって納得のいくものでした。
また、それらの微生物は特別な微生物資材などを購入して増やしたりしなくても、もともとその土地に住み着いている無数の微生物たちが充分な働きをしてくれるし、その方がその土地に適応して、よいということでした。
良質といわれる菌を他から持ってきても、結局土地にあわないため定着せず購入費用は無駄になってしまうということで、土着菌というものの素晴らしさを知りました。
何より橋本氏の作る野菜が素晴らしく、それまでの私の有機農法のイメージはあっさりと覆されました。
私のそれまでのイメージというのは、味はいいのかもしれないが、虫食いだらけで汚い、形など見た目が悪いというものでしたが、健康な野菜には抵抗力のような防衛する力があり簡単に虫に食べられてしまったりはしないし、形の悪い野菜なども肥料の質や使う量、使い方が原因であるということを知り、がむしゃらに農薬を使わない努力をしているのではなく、理論の元にきちんとした技術があって有機農業がおこなわれている、有機農業の技術の高さというものに驚きました。
また、大変な苦労をして無農薬野菜を栽培しているというイメージも持っていましたが、自然の仕組みそのものを活かした無理のない栽培技術は、野菜にとってよいことはもちろん、人間にとっても楽なのではないかという印象を持ちました。
実際に橋本氏が作られた野菜や農場を見てみて、有機農業の可能性というものを感じずにはいられませんでした。
衝撃の連続だった研修も期間は数日しかなく、本当にドタバタとボリビアへ出発しました。